「建設産業における女性の定着促進に向けた行動計画」の策定について
1.はじめに
令和2年1月16日、建設業5団体((一社)日本建設業連合会、(一社)全国建設業協会、(一社)全国中小建設業協会、(一社)建設産業専門団体連合会、(一社)全国建設産業団体連合会)、建設産業女性活躍推進ネットワーク(各地において女性活躍に取り組む団体で構成されるネットワーク)及び国土交通省は共同で「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画 ~働きつづけられる建設産業を目指して~ Plan for Diverse Construction Industry where no one is left behind」(以下、行動計画)が策定されました。
行動計画においては、「働きつづけられるための環境整備」に重点を置くことを端的に表現するため、これまでの「女性活躍」ではなく「女性定着」という表現を使用しています。
2.前計画(もっと女性が活躍できる建設業行動計画)について
建設産業がこれまで以上に女性が就業しやすい業界を目指すことは、男女問わず誰もが働きやすい業界になることを意味し、業界全体の活性化にもつながります。こうした目的のもと、平成26年に建設業5団体と国土交通省が共同で、「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」(以下、前計画)を策定し、以降、自主計画の策定や快適トイレの推進等の様々な取組を、官民が一体となって行ってきました。
その結果、女性技術者は平成26年の1.1万人から平成30年には1.8万人へと1.64倍増加し、女性技能者は平成26年の8.7万人から平成30年には10.4万人へと1.19倍増加し、職場や建設現場の環境が改善される等、多くの成果が上がってきています。
3.新計画策定の必要性
前計画の策定後、以下のような建設産業を取り巻く環境の変化があり、より女性が就業しやすい環境が整いつつあるなか、環境の変化を踏まえた取組の見直しを行う必要がありました。
- 働き方改革関連法や新・担い手3法を受けて、建設産業においても働き方改革の取組を進める必要がある。
- i-Construction等の取組により、生産性向上、働き方改革が可能に。
- 建設キャリアアップシステムの運用が開始。建設技能者の就業履歴等の情報が蓄積されるとともに、その情報をもとにした能力評価制度が始まる。
- より高まる担い手確保の要請と、多様な価値観を尊重する職場環境整備の必要性がある。
これらの環境の変化に対応しながら、前計画をより実効性のあるものとしていくことが必要であり、前計画の策定から5年目を迎える令和元年度、次の5年間を見据え新たな計画を策定しました。
新計画の策定にあたっては、前計画策定時の構成メンバーに「建設産業女性活躍推進ネットワーク」を加えて策定委員会を設置し、全国10ブロックでの意見聴取会の開催や、アンケートを通じた実態調査を実施して、女性の就業についての課題等の把握を行いました。
4. 行動計画について
建設産業における女性の就業をさらに促進するためには、就業の継続が大きな課題であることがわかり、行動計画は、建設産業で働く全ての女性が「働きがい」と「働きやすさ」の両立により、就業継続を実現することを目的にして、「働きつづけられるための環境整備」を中心に3つの柱で構成されています。また、それぞれの柱の趣旨を達成するための個別の目標が設定されています。
さらに、今後、様々な場面で行動計画の周知・普及を行っていくため、SDGsのアジェンダを念頭においた行動計画の英語名称も設定しています。
行動計画の内容について
行動計画の概要
働きつづけられるための環境整備を進める
◆ 官民を挙げた目標
「女性の入職者数に対する離職者数の割合」を令和6年までの間、前年度比で減少させる。
◆ 取組内容(主な取組例)
1. 建設産業の女性定着に向けた意識改革の必要性
イクボス宣言の推進(社内広報などで宣言を見える化)
2. 働き方改革の取組の推進
施工時期の平準化の推進、適正な工期の設定
3. 「働きがい」と「働きやすさ」が両立できる環境の整備
柔軟な働き方(短時間勤務制、フレックスタイム制、テレワーク、ワークシェアリングなど)ができる環境整備
4. 働きやすい現場の労働環境の整備
工事の現場において快適トイレや更衣室などの導入促進
5. 復職に向けたサポート環境の整備
建設キャリアアップシステムを活用して職場復帰時に就業履歴を証明、能力評価基準を活用してキャリアパス例を提示
6. 更にスキルアップできる環境を整える
Web学習プログラムなどの職場外での技術・技能向上に向けた機会の提供
女性に選ばれる建設産業を目指す
◆ 官民を挙げた目標
「入職者に占める女性の割合」を令和6年までの間、前年度比で増加させる。
◆ 取組内容(主な取組例)
1. 建設産業の魅力、働きがいの発信などによるイメージ戦略
教育現場と連携した、学生とその保護者に対する建設産業の魅力のPR活動(現場見学会や出前講座の実施など)
2. 企業や業界団体の女性定着に関する理解の促進
女性定着に関する企業の好事例の情報発信
3. 新しい建設産業の魅力を創造・発信
i-Constructionの取組などの建設産業における働き方改革の取組についての情報発信
4. 女性が活躍している仕事例の紹介
女性が活躍している仕事例の事例を収集し、情報発信
5. えるぼし、くるみんの認定取得に向けた取組を促進
アンケート調査を通じた認定取得に向けた取組の実態把握や、その結果を踏まえた実効性のある取組(説明会における認定取得に向けた働きかけなど)を業界と連携して実施
6.建設産業に関係する制度の整備など
建設業の現場における労働法制の影響などに関する整理(女性技能者の坑内労働など)
建設産業で働く女性を応援する取組を全国に根付かせる
◆ 官民を挙げた目標
①令和6年までに新計画の内容の認知度100%を目指す。
②令和6年までに都道府県単位で活動している団体の「建設産業女性定着支援ネットワーク」への加入をすべての都道府県で目指す
取組の趣旨と姿勢を明確にするため、
「建設産業女性活躍推進ネットワーク」の名称を
「建設産業女性定着支援ネットワーク」に変更
◆ 取組内容(主な取組例)
1. 計画の普及を図るための広報活動
新計画策定委員会に参加していない業界団体に対するPR方法の検討
2. 建設産業女性定着支援ネットワークのさらなる活動の充実、全国展開
建設産業女性定着支援ネットワークの構成団体が各地で行う地域ぐるみの活動の支援
3. 地域中小建設企業における女性技術者・技能者の確保・育成
各地域における女性定着のための取組の推進
まず最初の柱の「働きつづけられるための環境整備を進める」については、部下や同僚の育児等に配慮・理解のある上司のことを指す「イクボス」の取組等の「建設産業の女性定着に向けた意識改革の必要性」を新計画全体の最初の項目として記載されています。これは、各ブロックで開催した意見聴取会のすべてにおいて、女性定着を促進するための意識改革の必要性が指摘されており、世代や役職に関わらず、建設産業で女性が働くことの理解を深めることが必要であるためです。また、従来の慣習にとらわれない柔軟な働き方を目指して、施工時期の平準化の推進や適正な工期の設定等の「働き方改革の取組の推進」についても記載されています。
次の柱の「女性に選ばれる建設産業を目指す」については、建設産業全体の魅力が向上する取組を通じて、女性に選ばれる産業を目指す必要があることから、建設産業の魅力、働きがいの発信等によるイメージ戦略やえるぼし 、くるみん の認定取得の促進等の取組が記載されています。
最後の柱の「建設産業で働く女性を応援する取組を全国に根付かせる」については、団体や企業により自主的な取組が促進される環境整備をするため、各地域における女性定着に取り組む団体を応援する等の取組が記載されています。また、取組の趣旨と姿勢を明確にするため、「建設産業女性活躍推進ネットワーク」の名称を変更し、「建設産業女性定着支援ネットワーク」に改めて、地域ぐるみで建設産業で働く女性を応援する活動を促進します。
建設産業女性定着支援ネットワーク
全国各地に組織されている、女性の定着を推進する団体の相互交流や情報交換、連携等を促すことにより、建設産業で働く女性の入職促進、定着を図ることを目的として、平成30年度に始動。令和2年3月1日、「建設産業女性活躍推進ネットワーク」から「建設産業女性定着支援ネットワーク」に改称
5.おわりに
令和2年を「建設産業女性定着元年」と呼べるような年とするため、全国で「女性定着」が実現するよう官民挙げて取組を進めてまいります。
建設産業で働く全ての女性が「働きがい」と「働きやすさ」を実感でき、働きつづけやすい業界にすることを目指し、令和2年1月16日に官民を挙げた行動計画が策定されました。
内容については以下の通りです。
◆ 建設産業における女性の定着促進に向けた取組について(国土交通省)