「建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画」の策定について
1.はじめに
令和7年3月14日、建設業6団体((一社)日本建設業連合会、(一社)全国建設業協会、(一社)全国中小建設業協会、(一社)建設産業専門団体連合会、(一社)全国建設産業団体連合会、(一社)住宅生産団体連合会)、建設産業女性定着支援ネットワーク及び国土交通省は共同で「建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画」(以下、実行計画)を策定しました。
全体に共通する基本的考え方として、「トップの意識を変えて、現場が変わる。担い手確保につなぐ、全ての人が働きやすく働きがいのある魅力ある建設産業の実現へ」を実行計画の副題に据え、この考えの下に、魅力的な建設産業を実現し、若者入職促進等の担い手確保につなげるものとして女性活躍・定着促進に取り組むこととしています。

2.これまでの行動計画について
建設産業における女性活躍・定着促進は、平成26年8月に国土交通省と建設業5団体((一社)日本建設業連合会、(一社)全国建設業協会、(一社)全国中小建設業協会、(一社)建設産業専門団体連合会、(一社)全国建設産業団体連合会。以下同じ。)共同で、「もっと女性が活躍できる建設業行動計画」を策定し、官民一体となった取組をスタートさせました。
さらに、令和2年1月には、国土交通省と建設業5団体に建設産業女性活躍推進ネットワーク(平成30年に設立された女性活躍を推進する団体間の交流や情報共有することを目的としたネットワーク、その後、女性定着に向けて力を入れることを明確にするため「建設産業女性定着支援ネットワーク」に改名)を加えた7者が、共同で「女性の定着促進に向けた建設産業行動計画~働きつづけられる建設産業を目指して~」を策定し、「働きつづけられるための環境整備」を中心に官民それぞれが実施すべきことについてまとめ、取り組んできました。
これらの取組もあって、建設産業における女性の就業数は、女性の技術者・技能者ともに増加傾向にあり、一定の成果がみられます。 一方、入職者に占める女性の割合は依然として全産業・製造業と比べても低く、建設業に従事する女性約 88 万人のうち、技術者・技能者の割合は、それぞれ、技術者 3.4%、技能者 14.8%と、建設業全体の技術者・技能者の割合(技術者 7.9%、 技能者 65.0%)に比べ低く、特に、建設産業の特徴ともいえる現場での女性活躍・定着促進に課題があります。
3.新たな実行計画について
新たな実行計画の検討に際して、有識者ヒアリング、ブロック意見交換会、アンケート等を実施した結果、「入職に関すること(建設産業の魅力伝達、保護者を含めた広報活動等)」や「定着に関すること(育児休暇やその後の職場復帰、現場の環境整備、関係者の理解促進等)」に関する意見が強く示され、入職や定着に関しては未だ多くの課題を残しており、きめ細やかな対策を講じる必要があることが判明しました。
また、こうした課題解決、特に、建設産業の特色である現場を含めた環境整備や取組促進には、経営者層の意識改革が重要です。
以上を踏まえ、
- 現場に関する女性の活躍の推進
- 女性の定着の推進
- 経営者層にも近く、企業内の意思決定プロセスに関与する立場への女性参画の推進
を目指すべく、本計画では、以下の目標を設定し、目標達成に向けて、「3.官民をあげて取り組む内容」に示す内容について取り組みます。
実行計画の内容について
実行計画の概要
実行計画の取組目標
◯ 令和11年までの間、「建設業における女性技術者・技能者の人数」を毎年増加させる
◯ 令和11年までの間、「女性入職者に対する女性離職者の割合」を「建設業全体の入職者に対する離職者の割合」よりも、毎年上回らないようにする
◯ 令和11年度までの間、「建設業の管理職に占める女性の割合」を毎年度増加させる
◯ 令和11年度までに、都道府県単位で活動している団体の「建設産業女性定着支援ネットワーク」への加入を全ての都道府県で目指す




(1)建設産業の魅力向上・発信 ~選ばれる建設産業を目指して~
女性活躍・定着促進を切り口とし、全ての人が働きやすく働きがいのある魅力ある建設産業を実現し、担い手確保につなげていくため、建設産業全体で、全ての人(企業の経営層から現場で働く技術者・技能者をはじめ労働者まで全て)の意識改革・理解醸成を目指します。この際、まずは、企業のトップである経営層の意識改革が重要であり、そこから、現場で働く技術者・技能者をはじめ労働者全ての意識改革・理解醸成が図られていくことを目指します。
◆ 取組内容(主な取組例)
◯ 全ての人が働きやすく働きがいのある魅力ある産業を目指した意識改革
(まずは経営者層、さらに現場までの意識改革・理解醸成、一人親方として女性が働く場合の留意点整理)
◯ 働きやすく柔軟な働き方のできる環境整備(仕事と家庭の両立)
◯ スキルアップできる環境整備(多様で柔軟なキャリアパス、ロールモデルの提示)
◯ 建設産業の魅力・働きがいの効果的な発信(ターゲットに応じたきめ細かい戦略的な広報)
(2)働きやすい現場の実現 ~現場で働く女性のハード・ソフト両面からの環境整備~
快適なトイレ環境や更衣室の整備など、快適で働きやすい現場となるよう、ハード面からの環境整備は重要です。現場のハード面からの環境整備については、本計画の検討過程で実施した有識者ヒアリング、ブロック意見交換会、アンケート、検討会での議論において、
* 直轄工事だけでなく、自治体発注工事や民間工事でも快適なトイレの整備を強力に進めるべきであること
* 小規模な現場や短期間の現場の場合、必ずしも快適トイレを設置することが現実的でない場合もあることから、現場の規模等に応じた検討が必要であること
* 休憩や着替えのできる場所、更衣室も重要であること
といった様々な意見を得、課題が見えてきました。こうした検討結果も踏まえ、快適なトイレの整備や更衣室の整備をはじめ、現場のハード面からの環境整備を進めます。
◆ 取組内容(主な取組例)
◯ 現場のハード面からの環境整備(自治体発注工事、民間工事含め快適なトイレや更衣室の整備)
◯ 現場における働き方改革(適正工期の確保、ICT活用、朝礼の運営見直しなど働きやすい環境の整備)
◯ 現場における意識改革(現場のトイレや更衣室等の利用ルールの徹底、現場の理解醸成)
女性活躍・定着促進に向けた取組の裾野拡大 ~取組の普及・実行計画のフォローアップ~
「建設産業女性定着支援ネットワーク」は、建設産業で働く全ての女性が「働きがい」と「働きやすさ」を実感することを通じた「女性の定着」に取り組んでおり、取組の裾野は、令和6年12月時点で登録団体 56団体(うち全国活動 17 団体、都道府県活動 39 団体)、構成人数約9,000人と着実に広がっています。引き続き、女性活躍・定着促進に取り組む各団体の活動を支援するとともに、業界団体や地方公共団体、学協会との連携強化や、相談体制の強化など、更なる取組の質の向上に関係者が連携して取り組みます。
◆ 取組内容(主な取組例)
◯ 建設産業女性定着支援ネットワークの活動の全国展開・取組充実(業界団体との連携強化や相談体制の強化)
◯ 計画策定後のフォローアップ・取組内容の展開(実行計画普及、毎年度の取組状況の確認・課題把握・取組深化)など
4.おわりに
新しい実行計画の官民挙げた推進が、全国津々浦々で奮闘する女性の力になり、さらには、すべての人にとって働きがいと働きやすさが両立する建設産業につなげられるよう取り組んでまいります。
全ての人が働きやすく働きがいある魅力ある建設産業を実現し、建設産業の担い手確保につなげていくことを目指し、令和7年3月14日に官民を挙げた実行計画が策定されました。内容については以下の通りです。
◆ 建設産業における女性の定着促進に向けた取組について(国土交通省)
◆ 建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画(概要)
◆ 建設産業における女性活躍・定着促進に向けた実行計画(本文)
◆ 参考資料 建設現場における「快適に利用できるトイレ」に関する事例集
◆ 参考資料 建設産業×広報事例集 ~建設産業の魅力発信に悩んでいる企業・団体の皆様へ!ターゲット別広報事例集~