中小建設業の多様な人材確保・定着のための柔軟な働き方事例集
17/24

MESSAGE社員の声17取組成功の秘訣当社は社会情勢や業界が変化する中で、課題をネガティブに捉えるのではなく、「改善できる環境を得た」と捉えて様々な取組を導入してきました。必要に迫られて単純に導入するのではなく、導入の意義や期待する効果まで考えて取り組むことが重要だと思います。柔軟な働き方を実践してみて2023年、子どもが生後6か月の時に3か月の育児休業を取得しました。バックオフィスの強化やITツールの導入によって在宅ワークの幅が広がり、また仕事の手段が増えたことで、私のような長期の休業にも従業員で助け合って対応できる体制が整いつつあると思います。現場の責任者という立場ではありましたが、上司や総務部からのサポートもあり、気兼ねなく家族との時間を過ごさせていただくことができました。VOICE位での効率化と並行して、現場で働く社員の負担をさらに軽減するべく、現場業務のバックオフィスへの移管にも取り組み始めました。しかし、移管にあたり業務に関する知識やノウハウなどの提供を長年現場で働く社員に依頼したところ、拒否反応が出てしまいました。ベテラン社員の、様々な経験から培ったノウハウを簡単に引き渡したくないという感覚や、慣れ親しんできた自分なりのやり方を変えることへの抵抗感をいかに払拭していくかが、取組導入の大きな課題でした。員との合意形成が促進されました。具体的には、工程管理、品質管理、原価管理等は現場に残すべき重要業務とする一方、発注者により2次元で作成された設計図等をBIMやCIMを活用して3次元化する業務については、バックオフィスに移管しても問題ない業務として分業化を進めていきました。 その結果、バックオフィスが徐々に強化されていき、現在では「DX化で働き方からモノづくりをデザインする」という目的で現場業務の支援を専門に行う部署「e-デザインセンター」が立ち上がり、資材や産業廃棄物の管理、現場試験結果の取りまとめ等の業務を担うまでに取組が進んでいます。 取組の成果として、施工管理部門の残業時間が取組前と比べて15%減少しました。また、属人化していた業務の共有化と効率化により、施工管理の社員の長期の育児休暇の取得が可能になりました。 全社的にも、業務時間が短縮されたことで、社員が月2,3回の外部研修を受講できるようになり、人材育成にも役立っています。また、4週8休の達成率が80%に到達すると共に、有給休暇取得が促進され、リフレッシュ効果でメリハリがつき、社員のモチベーション向上に繋がっています。経営者の方々へのメッセージ熊谷一男さん▲現場ではスマートフォンを活用▲e-デザインセンターで働く社員代表取締役土木工事部 工事課畠山大輝さん社長を筆頭に社員に働きかけ、合意形成 ベテラン社員にとってはバックオフィスへの現場業務移管による将来的なメリットへの期待よりも、「長年の努力で積み上げてきた知識やノウハウを奪われたくない」、「現状仕事が回っているのだからわざわざこれまでのやり方を変えたくない」といった現在の思いが強く認識されていました。 そこで、社長自ら先頭に立ち、ノウハウの利用目的とその必要性(現場業務の分業による負担の軽減と効率化)について伝えていきました。また、経営者主導ではなく、現場の社員の声をもとに、現場に残すべき業務とバックオフィスに移管しても問題ない業務を整理することで、分業にあたっての社具体的な取組内容と導入にあたっての課題これまでの「当たり前」を変えることへの抵抗感 当社では約3年前から、業務端末のスマートフォンへの移行やWEBカメラ付きパソコンへの変更など、ITツールの導入による生産性の向上を図ってきました。例として、カメラとマイク、専用アプリを用いた遠隔臨場での現場確認作業や、現場を兼務する監理技術者のパソコンを用いた複数現場の管理などが挙げられます。ツール導入の成果として、無駄な時間の削減や業務自体のスピードアップなどにより、現場業務の効率化が進みました。 こうしたツールの導入による個人単解決策とその効果

元のページ  ../index.html#17

このブックを見る