中小建設業の多様な人材確保・定着のための柔軟な働き方事例集
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MESSAGE社員の声11取組成功の秘訣固定概念をなくすことが何より大切です。当社は規程にとらわれない対応を一つの解としましたが、会社によって抱える事情や強みは様々です。柔軟な発想で、企業規模や自由度の高さなど、中小企業ならではの利点を生かすことで、最適解は見つかると思います。柔軟な働き方を実践してみて出産・育児を機に一度は退職したのですが、やはり復職したいと考えていたところに、「週3日勤務でもよいのでパートとして指定管理業務をしてみないか」と声をかけていただき、会社に戻りました。子どもの成長に合わせて勤務日数を増やしていき、子育てがひと段落したことをきっかけにもともと働いていた総務部に戻り、現在も働いています。一度はあきらめた仕事も、子育ても全力で楽しむことができ、とてもありがたかったです。VOICE働き方を模索しましたが、社内規程の枠内ですと、彼らの望む働き方に100%答えることが出来ず頭を悩ませていました。 もちろん、社内規程についても必要に応じた見直しを行ってきていますが、それだけでは刻々と変化する個人の事情に臨機応変に対応することは難しいと思い、いっそのこと社内規程にとらわれることなく、ベストな働き方を模索することが、柔軟な働き方の実現に繋がるのではと考えました。そのため、当社では規程と向き合うのではなく、社員と向き合うことに解決策を見出しました。 また、妊娠・出産を機に退職した正社員の女性を、指定管理スタッフのパートとして再雇用した例もあります。その社員は子育てが落ち着いたことをきっかけに、2023年にはかつて10年勤めた総務部で契約社員として再び働き始めました。 当然ながら、社員の希望に寄り添った柔軟な働き方を実践するためには、勤務時間の減少分を生産性の向上で補う必要があります。そのため、当社では5年ほど前から業務のIT化に本格的に着手し、生産性の向上に努めています。例えば、現場勤務の社員が工事の進捗状況等を本社に報告する際、従来は電話や本社に戻って直接報告するという方法でしたが、ビジネスチャットツールを活用することにより、報告に費やす時間が大幅に削減できました。加えて、上記ツールの活用により各人が受け持つ現場の状況を社内で容易に共有することができるようになったため、必要に応じて担当外の現場のヘルプに行かなければならない時も、スムーズに現場に入ることができるようになりました。 実際に、事情により一度は離職し、働ける時間等に制約を抱える社員を2名再雇用できただけでなく、柔軟な働き方の事例が多い安心感からか、新入社員も2020年より5名採用できています。また、中途入社も含めると、柔軟な働き方を希望して採用に至った人数は7名にものぼり、離職率もここ10年で10名中3名(うち2名は結婚により転居)と非常に低い水準になっています。経営者の方々へのメッセージ石出慎一郎さん伊藤美穂さん▲緑地管理作業の風景▲置き場事務所でのPC作業の様子。造園代表取締役総務部社内規程の見直しによる対応の限界感 柔軟な働き方を実践するにあたり、一般的に時差出勤や配置換え、再雇用などの制度はあらかじめ社内規程に記載されており、それを見た社員が必要に応じて利用する、という流れになるかと思います。 しかし当社は技術者や技能者、事務系職員だけでなく指定管理スタッフも働いている関係で多様な給与や勤務形態の社員がいることに加え、結婚に伴う転居や子育て、介護など、個人が抱える事情もそれぞれ異なります。そのため、彼らが仕事と家庭の両立を無理なく実現できる本人も会社も納得できるよう配置や雇用形態を調整 当社では、社員の希望に合わせて、協議により規程にない雇用変更や配置転換などを行っております。その際、雇用形態ごとの役割や責任、勤務形態等の違いと社員の希望がうまく合致するよう配慮しています。 たとえば、現場担当の男性から、子どもの成長に立ち会える働き方をしたいと相談があった際には、本人の希望により正社員から契約社員に雇用変更を行いました。社会的にワークライフバランスが重視されるようになり、個々のワークスタイルが自由になってきている中で、このケースでは、一旦仕事の比重を減らして子育てに注力したい、という思いを尊重する決断をしました。もちろん、本人が希望すれば再び正社員とする予定です。具体的な取組内容と導入にあたっての課題解決策とその効果

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